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COLUMN ・ 2026-06-09

利を見て義を思え ── 変わらない問いと、変わった景色

権 成俊

若いころ、ある取材でこんな問いを立てられたことがあります。「好きなことば、いまパッと思いつくことばは何かありますか」

「見利思義(利を見て義を思え)」。論語の言葉です。

利益の前に立ったとき、それは義にかなっているかと問え。私はいまも、この問いを経営の中心に置いています。

あれはソフトバンクを退社してゴンウェブコンサルティングを立ち上げて7年目、36歳のころでした。

当時、私はこう語っていました。

「自分の利益だけを追求するのではなくて、ステークホルダーのうちのいちばん弱い部分にも利益をきちんと回したい。みんながハッピーになれる信頼関係を築くことが、仕事を通じて社会や世界に参加するものの責任だと思います」

いま読み返しても、そこに変わりはありません。

同取材で、ウェブ業界についてはこんなことを語っていました。

「ウェブというのは、まだまだ虚業だと思います。ひとの価値というか生きることに結びつくようなものを目指すべきだけど、それにつながっていないものが多い。製造業とか農業とか、本当に働いて価値を生み出しているひとたちの生産物にぶら下がっているだけじゃないのかと思うことはあります」

ウェブの技術やノウハウが先行し、それをどう顧客の事業に結びつけるかという本質が後回しにされていました。「商品を売って売り上げを挙げたからエライんじゃなくて、その商品を買ったことでお客さんにどれだけの利益が生まれたかを考えるべきだ」と、当時から言い続けていました。

あれから17年が経ち、ウェブは生活インフラになり、AIが加わり、業界の景色は激変しました。だが私の問いは変わっていません。

戦略指南AIを作ったのは、事業を成果につなげるための設計「選ばれる理由」をより多くの人に見つけて欲しかったからです。分析しっぱなしで終わるツールではなく、「分析→事業プラン→実行→成果」まで一気通貫で支援します。それが私の考える「虚業ではない」ウェブの仕事です。

この取材でもう一つ語った言葉があります。

「松下幸之助翁は250年というスパンで経営を考えているんですよね。いくらネットで時間の速度が速くなったといっても、ひとの寿命は一定で、信頼を受け継ぐのにかかる時間もそれだけかかる。10年20年で隆盛を極めようという考え方はおかしいと思うようになりました」

53歳になった今、この感覚はさらに強くなっています。

速さは手段であって目的ではありません。信頼は時間をかけて積み上げるものです。AIがどれだけ速く動けるようになっても、この原則は変わりません。

「見利思義」。

利益の前に、義を問う。

この問いを持ち続けることが、私が24年間ウェブの仕事を続けてこられた理由だと思っています。

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