COLUMN ・ 2026-06-04
AIオーナーシップとは何か——AIに使われる側から、使いこなす側へ
権 成俊
AIオーナーシップとは何か——AIに使われる側から、使いこなす側へ
私は就職氷河期世代です。1993年から2005年に就職活動をし、バブル崩壊後の最も厳しい時代に社会に出た、1,700万人以上の一人です。現在53歳。ウェブ業界で24年、経営コンサルタントとして多くの中小企業の経営戦略に携わってきました。
だからこそ、この時代の閉塞感は、他人事ではなく、自分事として感じています。
失われた30年。この言葉が示す通り、日本のGDPはほとんど成長しないまま三十年が過ぎました。少子高齢化が進み、働く世代は減り続け、年金制度は限界を迎えようとしています。私たちの世代は、「会社に属していれば安心」という時代を生きてきました。しかし今、その前提が音を立てて崩れています。
定年は目前です。しかし年金だけで生きていけないことは、政府自身が「老後に2,000万円が必要だ」と報告書で示しました。その報告から数年、円安とインフレが進みました。10年後、その2,000万円がどれほどの価値を持つのか、誰も保証できません。
早期退職やフリーランス化を選ぶ50代が増えています。でも多くの人が、同じ問いの前で立ち止まっています。「自分には何ができるのか」と。
そこに、生成AIが現れました。
2023年のChatGPT公開から始まったこの波は、2026年に入ってからは「加速」という言葉でも追いつかない変化になっています。世界中から国家予算規模の資金がAIに注ぎ込まれています。蒸気機関が農業社会を産業社会へと変えたように、電気が夜を昼に変えたように、AIは今、人間の「知的労働」の構造そのものを変えようとしています。
ここで、重要な問いがあります。
AIは、私たちにとって敵なのか、それとも味方なのか。
AIには、正反対の二つの使い方がある
AIには、正反対の二つの使い方があります。
一つ目は、誰でもできることを広げる使い方です。メールの返信を早くする、資料作成を効率化する、検索を自動化する。確かに便利になります。だが、気づけばAIが進化するほど「自分でなくてもいい仕事」になっていきます。これを、私は「AIレイバー」と呼んでいます。AIに使われる側です。
二つ目は、あなたにしかできないことを広げる使い方です。あなたが生きてきた経験、向き合ってきた問い、気づいてきたことの積み重ねがあります。それは「知的アドバンテージ」であり、AIはその価値を何十倍にも拡大してくれます。これが「AIオーナーシップ」です。あなたがAIを雇って使いこなす側に立つことです。
AIに仕事を奪われるのか、それともAIをパートナーにするのか。その分かれ道は、AIが敵か味方かではなく、あなたがAIをどう使うかによって決まります。
なぜ、氷河期世代にこそチャンスがあるのか
私はこのコンセプトを、特に就職氷河期世代に向けて伝えたいと思っています。
なぜなら、私たちにはチャンスがあると信じるからです。
「もう遅い」「年だから」と思っている人が多い。でも、違います。AI時代だからこそ、自分の経験と思考が武器になる時代が来たのです。定年を前に、自分のビジネスを持つなら、今が最後にして最高のチャンスかもしれません。
私は、このAIオーナーシップという考え方を、これからこのデジ革のコラムで、何回かに分けてお話ししていくつもりです。そして、ここで綴ったコラムをベースにして、いずれ一冊の本にまとめたいと考えています。
次回は、AIオーナーシップの出発点となる「知的アドバンテージ」——あなたにしかできないことを、どう見つけるのかについてお話しします。